デジタル市場レポート2017年12月版

Column 2017

2017/12/27

DMM.comがスタートアップの
「CASH」を70億で買収
この買収は、今後のアプリビジネスの
象徴的事例となるか?

本年注目のアプリの一つとして、「CASH(キャッシュ)」が挙げられます。「目の前のアイテムを一瞬でキャッシュ(現金)に変えられる買取アプリ」で、2017年6月28日、サービス開始16時間で申込が殺到し、サービスを停止したことが話題になっています。

 この状況を素早くキャッチし、「CASH」の将来性を見込んで買収を決定したのがDMM.comです。その意思決定は迅速で、「CASH」がサービスを開始してから約5カ月後。サービス実施期間では2ヵ月に満たない期間で決定しています。さらにアプリはiOSのみで、ダウンロード数も10万程度しかない段階での決定です。

 と同時に、買収を即座に受け入れた「CASH」にも驚かされます。両社は、「即時買取」ビジネスのポテンシャル故の大手競合会社の市場参入を予期し、競合他社が市場参入する前に圧倒的な自社ブランドの確立を図ったと思われます。

 それを裏付けるように、ヤフーは、本年11月20日、「ヤフオク!」内で、ブックオフコーポレーション、マーケットエンタープライズと連携した家電・携帯電話・ブランド品などの買取サービス「カウマエニーク」を開始し、メルカリも本年11月27日、同買取サービスの「メルカリNOW」を投入しています。

 今回のDMM.comの「CASH」買収は、単なるM&Aではなく、今後のアプリビジネス対する意思決定のスピードとダイナミズムの必要性を象徴しているかもしれません。何れにせよ、今後のアプリビジネスにとっては示唆に富んだ事例になると思われます。


Figure 1: CASHダウンロード推移

CASHスクリーンショット

年末商戦の真っ只中
米国Apple App Store注目アプリは
ローカル・フリマアプリの
「OfferUP」

本年米国Apple App Store 、ブラック・フライデーを含む30日間での注目アプリは「OfferUP」です。このアプリの計測期間でのDAU(デイリー・アクティブ・ユーザー数)*は200万程度ですが、今回計測した1ヵ月前と比較すると、DAUトップ10ショッピングアプリでは最大のDAU増加数となっており、1日平均約20万人のアクティブ・ユーザーを増加させています。

 「OfferUp」は、米国ユニコーンの1社がリリースしている無料ショッピングアプリで、基本的にローカルでの引き渡しなので、送料の計算や、郵送する必要はなく、簡単に売買が出来ます。

 さらに「OfferUp」は手数料一切なしのサービスなので、自分が決めた値段を、そのまま、その場で現金で受け取れます。加えてセキュリティ強化のため、電話番号やメールアドレスが載っているメッセージは、自動的に数時間後に消去されます。

 米国ではローカルでの商品売買ではクラシファイドの「Craiglist」が有名ですが、「OfferUp」は、ローカルをターゲットとしながらも、よりモバイルに特化したサービスとなっています。さらに手数料がないことからも、より多くのユーザーを引き付ける結果となっています。

Figure2: (Source : Priori Data, Apple App Store, November 17-December 16 2017, US)
OfferUpスクリーンショット:(Source : Apple App Store)

グローバル市場顧客数シェアNo.1の
A/Bテストツールは「Optimizely」
国内では「Google Analytics Experiment」
が僅差でトップ

グローバル市場A/Bテストルーツは約40商品ありますが、その中で最大の顧客数を持つツールは「Optimizely」です。元Googleのエンジニアが開発したツールで、アメリカ大統領選挙の際、そのエンジニアが実施したA/Bテストでオバマ陣営の寄付金を100億円以上引き上げた実績が評価され、世界的なブランドとなっています。

  第2位はインドのWingify社が開発した「Visual Website Optimizer」。使いやすさと低価格が支持されて20%近いマーケットシェアを保持しています。グローバル市場ではこの「Optimizely」と「Visual Website Optimizer」が2大A/Bテストツールとなっています。

国内A/Bテストツール市場においても、この2大ブランドは上位にランクされていますが、トップは僅差で「Google Analytics Experiments」となっています。以前「Website Optimizer」と呼ばれていたツールを「Google Analytics」の1機能として統合したものです。国内でもユーザー数の多い「Google Analytics」ですから、「Optimizely」と拮抗するツールとなっています。また、日本産の「Kaizen Platform」が第5位にランクされています。

(Source : Datanyze, A/B Testing Category, December 25 2017, Global)
(Source : Datanyze, A/B Testing Category, December 25 2017, Japan)