インターアローズ デジタル市場レポート 2020年9月号

インターアローズ デジタル市場レポート
2020年9月号

ハイパーカジュアルゲームの現状

現在、スマートフォンゲームアプリ市場では、日本を含めたグローバル市場の2極化が進行していると言われています。売上金額ランキングの上位は、過去からのスーパーヒットアプリが依然市場を独占し、新作アプリが売上金額で上位に食い込むことは非常に難しい状況が続いています。一方、新たな動きとして、課金モデルではなく、最先端のテクノロジーを活用し、広告によって最大の収益を上げるハイパーカジュアルゲームが登場しています。また日本のパブリッシャーもこのハイパーカジュアルゲーム市場に参入し、グローバル市場で成功しているパブリッシャーが出始めています。

今回のレポートは、このハイパーカジュアルゲームにフォーカスし、現在グローバル市場でどのようなパブリッシャー、ゲームアプリが成功しているのか、そのビジネスモデルはどのようなものなのか、さらにグローバル市場で成功している日本のパブリッシャーはどの会社で、どのようなゲームアプリを展開しているのかをレポートします。

 

グローバル市場ダウンロード数ランキング

まず本年1月1日から8月15日までの期間で、世界55ヵ国Apple App Storeでのダウンロード数トップ10アプリを調査してみると、トップ10中、5アプリがハイパーカジュアル系ゲームであることがわかります(Figure 1中、緑にマークされたアプリ)。ダウンロード数では、1,500万を超えているのにも関わらず、課金による売上金額は全て10万ドル以下で、膨大なダウンロード数を背景に広告によって収益を上げています。

その筆頭がフランスのゲームパブリッシャーVoodoo社で、トップ10アプリ中、3アプリをランクインさせ、トップの「Woodturning 3D」のダウンロード数は2,600万を超えています。

 
 

Figure 1
Apple App Store
グローバル市場(上位55ヵ国)
2020年1月1日-8月15日
ダウンロード数トップ10アプリ

Figure 1

(Source : Airnow Data(旧Priori Data), Apple App Store, January 1 – August 15, 2020, Global)

 

Voodoo社とは

ではこのVoodoo社はどれくらいのアプリをリリースし、どれくらいのダウンロード数を達成しているのでしょうか?Figure 2は本年1月1日から8月15日までの、世界55ヵ国Apple App StoreでのVoodooアプリトップ5、Figure3は同期間でのGoogle Playでのトップ5アプリを掲載しています。

驚かされるのは、そのリリースアプリ数とダウンロード数で、Apple App Storeでのアプリ数は170。この期間における総ダウンロード数は2億8,000万。Google Playでのアプリ数は99で、総ダウンロード数は6億5,000万となっています。世界的なAndroid携帯の普及を背景に、Google Playでのダウンロード数が多く、トップの「Woodturning」のダウンロード数は6,800万を超えています。

では何故Voodooは、これ程のアプリを短期間にリリースでき、莫大なダウンロード数を達成できるのでしょうか?それは彼等のビジネスモデルにあります。まず彼等は、言語を超え、誰もが簡単にプレイできるハイパーカジュアルゲームにフォーカスしています。ゲームは基本無料で、売上は課金ではなく、広告から収益を上げるビジネスモデルです。これを達成するため、彼らは自社でゲームを開発するのでなく、世界中のゲームデベロッパーからゲームを集めて、その中からヒットする可能性のあるものをだけを選別しています。それらのゲームに彼らのアイディアや最先端のテクノロジーを加え、グローバル市場でヒットできるゲームに仕上げています。これにより彼等は、ゲーム会社の常に悩みの種になっていた「ゲーム開発コスト」と「ゲーム開発期間」の問題を一挙に解決させ、短期間に大量のヒット作品をリリースすることに成功しています。

さらに市場分析、短期間に大量のダウンロードを達成させるための広告・プロモーション戦略、ダウンロード後のユーザー行動分析、これによるゲームコンテンツの修正、広告からいかに最大の収益を上げるかに関して、最先端のテクノロジーを活用している点が今までになかったビジネスモデルと言えます。Voodoo社は、自社の売上金額を公表しておりませんが、フランスのレゼコー紙によれば、Voodoo社の売上金額は、2016年では113万ユーロだったものが、2017年には7,100万ユーロ、2018年には3億2,500万ユーロに急増したと発表しています。

 

Figure 2:
Apple App Store
グローバル市場(上位55ヵ国)
2020年1月1日-8月15日
Voodoo社ダウンロード数トップ5アプリ

Figure 2

(Source : Airnow Data(旧Priori Data), Apple App Store, January 1 – August 15, 2020, Global)

 

Figure 3:
Google Play
グローバル市場(上位55ヵ国)
2020年1月1日-8月15日
Voodoo社ダウンロード数トップ5アプリ

(Source : Airnow Data(旧Priori Data), Apple App Store, January 1 – August 15, 2020, Global)

 

国内ハイパーカジュアルゲーム・パブリッシャー

世界的なハイパーカジュアルゲームの成功によって、日本でもグローバル市場で成功するパブリッシャーが誕生しています。その筆頭がGeisha Tokyo社とKAYAC社です。Geisha Tokyo社は、2006年設立のモバイルゲーム開発会社。当初はGREEやmixi向けにソーシャルゲームを開発していましたが、世界的なスマートフォンの普及と、パイパーカジュアルゲームの成功をいち早く察知し、日本で初めてハイパーカジュアルゲームをグローバル市場に向けてリリースしたパブリッシャーです。

またKAYAC社は、1998年設立の「日本的面白コンテンツ事業」会社で、ゲームの他にもSNS、Webプロモーション、イベント企画、R&D等、幅広い領域で事業を展開しています。特にパイパーカジュアルゲームは、昨年から本格的に参入し、車駐車パズルゲーム「Park Master」の世界的成功(米国Apple App Storeの無料アプリダウンロード数でNo.1を獲得)により、さらにこの分野のビジネスを拡大させています。

両社で驚異的なのは、そのダウンロード数で、2020年1月1日から8月15日までの、グローバル市場における国内パブリッシャーの累計ダウンロード数ランキングを調査してみると、Geisha Tokyo社は、Apple App Storeにおいて、任天堂を上回るダウンロード数を達成しトップになっていることがわかります。またKAYAC社も、任天堂には及ばないものの、SEGA、BANDAI NAMCO等の大手ゲーム会社を抑えて第3位にランクインしています。Google PlayではトップはSEGA、第2位は任天堂となっていますが、これに続きGeisha Tokyo社が第3位、KAYAC社が第4位となっています。

 
 

Figure 4:
Apple App Store/Google Play
グローバル市場(上位55ヵ国)
2020年1月1日-8月15日
国内パブリッシャーダウンロード数ランキングトップ10

(Source : Airnow Data(旧Priori Data), Apple App Store, January 1 – August 15, 2020, Global)

 

では具体的に、Geisha Tokyo社とKayac社はどのようなゲームをリリースしているのでしょうか?まずGeisha Tokyo社が現時点でApple App Storeにリリースしているアプリ数は100、Google Playでは16となっています。本年に入ってApple App Storeで最大のダウンロード数を達成しているのは、世界で唯一のウォーターマーブリングシミュレーター「Watermarbling」。但し、累計のダウンロード数では2018年リリースしたレーシングアクションパズル「Traffic Run!」(累計3,430万)、雪だるまアクションパズル「Snowball.io」(累計1,650万)の方が人気が高く、Google Playでは「Traffic Run!」が第1位、「Snowball.io」が第3位となっています。

 

Figure 5:
Apple App Store/Google Play
グローバル市場(上位55ヵ国)
2020年1月1日-8月15日
Geisha Tokyo社ダウンロード数トップ5アプリ

(Source : Airnow Data(旧Priori Data), Apple App Store, January 1 – August 15, 2020, Global)

 

一方KAYAC社は、昨年9月にリリースした「Park Master」がメイン。但しそのダウンロード数は膨大で、Apple App Storeで1,370万、Google Playで2,830万となっています。「Park Mater」に続くアプリとして、Apple App Storeでは本年2月に「Noodle Master」、6月「Paint Dropper」をリリースしていますが、「Park Master」のダウンロード数レベルにはまだ達していない状況です。

 

Figure 6:
Apple App Store/Google Play
グローバル市場(上位55ヵ国)
2020年1月1日-8月15日
Kayac社ダウンロード数トップ5アプリ

Figure 6

(Source : Airnow Data(旧Priori Data), Apple App Store, January 1 – August 15, 2020, Global)

 

最後にGeisha Tokyo社とKayac社のトップアプリがどの国でダウンロードされているのか調査しました。
Geisha Tokyo社iOS版トップの「Watermarbling」の場合、最大の国は米国で、グローバルダウンロード数全体の半分以上(52%)を占めています。これに11%で英国が続きます。iOS版の場合、それ以外の国では、iPhoneの普及率に応じて欧米を中心とした国がトップ10に入っていますが、その比率は全て10%以下となっています。またAndroid版のトップアプリ「Traffic Run!」もトップは米国となっておりますが、そのシェアは23%とiOS版の約半分となっています。その代わりに、欧米の国に加えて、Android携帯のユーザーが多い、メキシコ、インド、ブラジル等の南米、アジアの国がトップ10内にランクインしています。

 

Figure 7:
Apple App Store/Google Play
グローバル市場(上位55ヵ国)
2020年1月1日-8月15日
Geisha Tokyo社iOS版「Watermarbling」、Android版「Trafic Run!」ダウンロード数トップ5アプリ

Figure 7

(Source : Airnow Data(旧Priori Data), Apple App Store, January 1 – August 15, 2020, Global)

 

一方、Kayac社iOS版の「Park Master」のダウンロード数トップの国は米国(41%)。但し、Geisha Tokyo社の「Watermarbling」との違いは、「Watermarbling」は米国、英国等が中心だったのに対し、「Park Master」は中国、日本のダウンロード数も多く、両国とも10%以上のシェアとなっています。またAndroid版は、Geisha Tokyo社「Traffic Run!」とは大きく異なり、トップは米国ではなくインド(17%)。これにロシア(16%)、米国(15%)、ブラジル(14%)の結果となっています。

 

Figure 8:
Apple App Store/Google Play
グローバル市場(上位55ヵ国)
2020年1月1日-8月15日
Kayac社iOS・Android版「Park Master」ダウンロード数トップ5アプリ

Figure 8

(Source : Airnow Data(旧Priori Data), Apple App Store, January 1 – August 15, 2020, Global)

 

現状グローバル市場において、ハイパーカジュアルゲームで成功しているのは、Geisha Tokyo社、Kayac社のみですが、国内では過去からのスーパーヒットアプリが依然売上を独占する中、グローバル市場において広告モデルで収益を上げるパイパーカジュアルゲームは、国内のゲームパブリッシャーにとって、新しいビジネスチャンスとなっていると思われます。

 

スクリーンショット

スクリーンショット

(Source : Apple App Store)

 

iOS版「Park Master」アプリ 使用SDK一覧

弊社が国内総代理店となっている米国MIXRANKは、データの取得が難しいiOSアプリ内での採用SDKデータを提供できることで、世界的に高い評価を得ています。今回のレポートは、このMIXRANKのデータを使用して、上記でレポートしたKayac社の「Park Master」を取り上げ、ハイパーカジュアルゲームとして現在どのSDKを採用しているのかをレポートします。

下記Figure 9が、本年1月31日のアップデートの際に「Park Master」が採用したSDKの一覧となります。その最大の特徴は、「AppLovin」「Tenjin」等、ゲームユーザーの行動分析に特化したSDKを併用し、その上で「Admob」「AddLive」「Tapjoy」「SmaAD」「InMobi」「SupersonicAds」「Unity Ads」等の広告関連SDKを多用している点にあります。これは、ビジネスモデルが広告収入となっているハイパーカジュアルゲームにとっては、当然な施策であると言えます。

 

Figure9:
2020年1月31日
iOS版「Park Master」採用SDK一覧

Figure 9

(Source : MIXRANK, iOS App, “Park Master”, January 31, 2020)

 

その他の特徴としては、アプリ開発にはマルチプラットフォームの開発が可能な「Unity」を採用し、さらにFacebook関連のSDKを多用して、Facebookとの連携を強化していることが推察できます。

 
 
 
Airnow

Airnow社は、2020年9月にロンドン証券取引所での再上場を予定し、英国ロンドンに本社を持つ、アプリ・マネジメント・ソリューション提供会社です。アプリ市場分析データ、アプリ配信、アプリ・サイバーセキュリティ、アプリ・マネタイゼーションのサービスをワンストップで提供しています。Airnow Data(旧PrioriData)は、このAirnowのアプリ市場分析データサービス部門。アプリストア上でランキングされているアプリのダウンロード数、売上金額データを提供しています。デイリーベースで55カ国、カテゴリ分析、パブリッシャー市場占有状況、ダウンロード数、売上金額、DAU、MAU、及びARPDAU(1日のアクティブユーザー一人当たりの売上金額)のデータを提供しています。MAU、DAUは通常アプリに実装された測定用SDKを使い、モバイルアプリユーザをパネルとして推定値を出しますが、 Airnow Data(旧PrioriData)は、Airnow社傘下企業およびデータパートナーとの提携により150万社のデベロッパー及びパブリーシャーデータと、トラッキング対象ディバイスは35億とビックデータを活用し算出されているのが特徴です。クライアントにはHSBC, Mastercard, ebay, PayPal, Unilever, Sony, BMWなどがあります。

詳しくは http://prioridata.net/

 
 
MixRank

米国サンフランシスコで生まれた先進的なテクノロジーデータ「MIXRANK」は、WebサイトテクノロジーからモバイルSDKデータ、ディスプレイ・テキスト広告まで、総括的にデータをトラックします。特にWebテクノロジーと、iOSを含むモバイルアプリ・SDKデータの両方をトラックしている企業はほとんどなく、MIXRANKが高い評価を受けてる理由の1つです。SDKに関しては、世界200カ国、アプリ及びアプリ内で採用されているSDKデータを提供。取得が難しいと言われるiOSのアプリデータに関しても、760万以上のiOSアプリの実装SDKデータを保有。さらにそれがいつ採用され、いつ削除されたかのデータも提供可能です。

詳しくは https://interarrows.com/mixrank.html

 
 

データ提供

インターアローズ

株式会社インターアローズ

インターアローズは、 デジタルマーケティング&ソリューション・エージェンシー。ICT世界市場における技術動向の調査および評価を通じて、革新的なインターネットデータおよびソリューションサービスを顧客に提供しています。 弊社はまた、グローバルな技術とビジネスを日本に紹介することを専門としています。 戦略的海外パートナーには、comscore、MIXRANK、UXCam、およびCrazy Eggがあります。 インターローズは東京とロンドンにオフィスを構えています。

詳しくは http://www.interarrows.com/

 
 

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スマーフォンアプリ市場分析データ Airnow Data(旧Priori Data):http://www.prioridata.net

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担当:高橋 治彦  takahashi@interarrows.com